3443通信 No.375
三好耳鼻咽喉科クリニック ラジオレポート
ラジオ3443通信「英国の枯草熱と森林の消滅」

耳・鼻・喉に関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって45年。今回は2015年7月にfmいずみで放送された内容を紹介します。
[An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]
英国の「枯草熱」と「森林の消滅」
An.
そもそも中国スギを発見し、学名を付けたのは、英国の植物学者兼プラントハンター、ロバート・フォーチュン。そこで日本スギの学名は「クリプトメリア・ジャポニカ」であるのに対し、中国スギは「クリプトメリア・フォルトネイ」とフォーチュンの名前入りになっていると、前回までに伺いました。
Dr.
ロバート・フォーチュンが茶の木をロンドンへ移送しようとしていたのは、1850年前後ですから、その時期には中国スギがすでに学名が付けられる段階にあったことが分かります。
An.
日本でスギ花粉症が発見された1963年、スギは日本特有の樹木と錯覚され、スギ花粉症も日本固有の病気と信じられていたんですよね? でも、現実には日本におけるスギ花粉症の発見は、中国スギ発見の100年後だった(笑)。
Dr.
中国の話題を進める前に、日本におけるスギ花粉症の発見についても、ご説明しておきます。日本でスギ花粉が発見されたのは、栃木県の日光。たまたまその地域の病院に勤務した耳鼻科医が、春先になると「くしゃみ・鼻水・鼻詰まり」のひどくなる21人の患者に気付きました。
An.
それまで日光でもそういう症状の患者さんは、見られなかったんでしょうか?
Dr.
それまでにも同様の症状の患者さんはこの病院を受診していましたが、スギ花粉症とは誰一人、思わなかったらしいんです(笑)。
An.
それはなぜですか?
Dr.
外国に「枯草熱」と呼ばれる花粉症のあることは、日本でも知られていましたが、日本のそれは、まだ知られていませんでした。
An.
思い出しました。確か英国で、サイロに収納されていた牧草(図1)を処理していた農民たちの間に広まった、原因不明の「くしゃみ・鼻水・鼻詰まり」でしたね(笑)。

図1
Dr.
さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。世界で初めて出現した枯草熱、つまり「花粉症」は英国で繁殖したカモガヤが原因でした。産業革命を迎えることになる英国の国土には「森林の消滅」と表現されるほどの生態学的危機、エコロジー上の大問題が起きていた。
An.
それはどんな危機でしょう?
Dr.
緑地の面積が極端に減少してしまった、ということです。
An.
分かりました。そこで自然発生的にブームになったのが、いわゆる英国の「ガーデニング」現象! 英国は世界中から英国に根付く、さまざまな有用な植物を世界の7つの海から収集してくる必要があったんですね!
Dr.
だからこそその時期、ロバート・フォーチュンなどの有名な「プラント・ハンター」たちが必要とされたんです。
An.
もちろん、英国の緑化運動だけじゃなく食料事情の改善にもハンターたちは活躍しました。
Dr.
茶の木の清からの移植も、フォーチュンの重大な任務だったわけですから、ね。
An.
こうして伺ってくると、別々に進行していた話題がOA全体でつながりを持つ、生きた物語であるように感じられてきました。深まりゆくお話の続きが、楽しみです。