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みみ、はな、のどの変なとき

22 耳が聞こえない「大きな声なら大丈夫?」

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⽿が聞こえないこと、つまり難聴については、実に多くの誤解もしくは理解不⾜が、常につきまとっています。いちばん⼤きな誤解は、⽿が聞こえないならば⼤きな声で話してやれば聞こえるはずだ、という単純なものです。
 もちろんそれは本当にちょっとした、しかしそれだけになかなか容易に理解してもらえない、そんな勘違いなのです。それにはいくつかの理由があります。

理由の第⼀は、⽿の聞こえの悪さにはいろいろなタイプがあり、そのタイプによってまるで聞こえ⽅が異なる、ということです。例えば⽼⼈性難聴では⾼⾳域、つまりカン⾼い⾳の⽅から聞こえが悪くなるものですが、その際にはこんな現象が起こります。まず男性では、ご⾃分の奥さんの声が聞こえにくくなります。別に奥さんが嫌いになった訳ではなく、奥さんから逃げ回っているということでもありません。奥さんのことが実は⼼の底では恐ろしくって、だから⼼理的な無意識の抑制が働いている、などと勘繰らないでください。奥さんの声は⼀般に男性の声に較べて⾼⾳域に主成分があるから、すなわち⾼い声で話をするから、⾼い⾳の苦⼿な⽼⼈にはその声が聞こえにくい、それだけなのです。奥さんは、どうぞご⼼配無く。

⾼い⾳が苦⼿ですと話し掛けられても、話をされていることは判るが話の内容はまるで判らない、そんな奇妙なことも起こります。それは⾔葉の⾳の構成成分の問題です。例えば”アイウエオ”といった⺟⾳は成分が⽐較的低い⾳域にあります。それに対して”サシスセソ”などの⼦⾳は、成分が⾼い⾳域にあります。そうすると、⾼⾳域の聞こえの悪い⽼⼈では、⾔葉のはしばしを形成する”サシスセソ”を、⾔われた場合に良く聞こえない、という結果となります。”アイウエオ”はちゃんと聞こえるのですけれどもね。このために⽼⼈性難聴では会話の際、話をされていることは判るが⾔葉のはしばしが聞き取れず、話の内容は皆⽬理解できない、ということになります。

それから、こんなこともあります。隣の家のおばあちゃんに声を懸けるとき、⼩さな声で「おばあちゃん」と呼び掛けても聞こえません。それなら、と⼤きな声で「おばあちゃん︕」と叫ぶと、おばあちゃんはこう応えます。「なんだよ、うるさいね」と。

 

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