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みみ、はな、のどの変なとき

67 中国でのアレルギー疫学調査

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さてここまで私のを読んで頂いて、なぜ私たちが⽇本ばかりでなく中国でもアレルギー性⿐炎の調査を⾏なっているのか、不思議に思う⽅もおられるかも知れません。
 なぜなら中国では、まだそんなにアレルギー疾患が多い訳でもなく、その意味から⾔うと、⽇本や欧⽶のようなすごくアレルギーの多い地域で調査した⽅が効率が良い、と⾔えなくはないからです。

私たちだって実は中国での調査開始以前には、そんな考え⽅を否定できないと思っていました。ところが、1995年に南京医科⼤学で医学⽣を対象に疫学調査を開始し、中国の被験者のアレルギーの頻度が⽇本よりかなり低いことを知って、その考えが必ずしも当たっていないことに気付きました。

⽇本でも第⼆次世界⼤戦前には、花粉症を始めアレルギー性⿐炎はその存在すら知られていませんでした。このために⽇本⼈と欧⽶⼈とでは⼈種の異なるために、アレルギーの頻度が違うのかも知れないとの議論さえ、当時は⾒懸けました。
 けれどもご存じのように、東京オリンピックが開催された1964年のスギ花粉症発⾒前後から、⽇本⼈のアレルギー性⿐炎は激増し、今では⽇本⼈の国⺠病と形容されるほどです。
 このためアレルギー性⿐炎がこんなに増えた背景に、遺伝ではなく社会的環境要因の変化が⼤きく関わっているのではないかと、考えられるようになりました。
 そしてその環境要因を突き⽌めることができれば、原因を除去してアレルギーを治すことだってできる訳です。

ところが約30年前から増加し始めた⽇本のアレルギーでは、要因が30年以上前のものであって、現在ではその要因は変貌してしまっている可能性が⾼いのです。

それに対して、今まさに北京オリンピックへ向けて邁進中の中国は、東京オリンピック時代の⽇本のような社会的環境の最中にあります。当然中国社会は、アレルギー増加の背景要因を多々備えているはずです。実際私たちの調査では、1995年に38.5%だった南京医科⼤学1・4年⽣のアレルギーの頻度は、5年後の1999年には47.4%にまで増加しています。
 つまり中国では、アレルギー増加の社会的要因が揃いつつあり、それにつれてアレルギーそのものも確かに増えているのです。
 中国でこそ私たちは、アレルギー増加の原因を突き⽌め、その解決策を確⽴し得るのかも知れません。

 

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