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2023年2月 No.336

 

みみより会 会報誌『みみより』
難聴者向けの電話リレーサービスを利用してみて

図01

 先般、私たちが実施した『難聴児・者に対するマスクアンケート』にご協力頂いた「みみより会」の会報誌『みみより』(2023年1月号)に、大沼直紀先生が理事長を務める電話リレーサービスに関する投稿文が掲載されました。
 この電話リレーサービスとは、耳の聞こえが遠い難聴者などが電話を掛ける際、手話や文字チャットを用いる通訳者を介して、相手先とコミュニケーションをとるサービスです。会話をスポーツのリレーのように繋ぐことから電話リレーサービスと呼ばれています。

以下、みみより誌より転載。

電話リレーサービスを利用してみて
橋本 英憲(京都)

 電話が出来ないことは、ずっと長い間の悩みだった。それは、多くのみみより会会員の皆さまにとっても同様だろうと思う。
 そうした生活に光明が差したのは、日本財団がはじめた「電話リレー」のサービスだった。このサービスは「電話リレーサービスとは、聞こえない人と聞こえる人を電話リレーサービスセンターにいる通訳オペレーターが<手話>や<文字>と<音声>を通訳することにより、電話で即時双方向につなぐサービス」と日本財団のHPで説明されている。

 始めは二〇一三年からモデルプロジェクトとして実施された。これは二〇二一年に公共インフラとしての電話リレーサービスに移行するまでに、全国の一万二千二百名の聴覚障害者に利用されていたという。

 私は、このモデルプロジェクトが始まったころにすぐに申し込んだ。以来、私の生活範囲の拡大にどれだけこの電話リレーサービスが役立ってくれたかしれない。
 そして、七年間にわたるこうした実績がものを言って、二〇二〇年に「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が可決され、二〇二一年度より公共インフラとしての電話リレーサービスが開始された。公共インフラということは、制度として国の事業として位置付けられたということであり、二十四時間のサービス、110(警察)や、119(消防)等緊急電話の中継が実現した。

 そして、この財源としてサービスの利用者が払うお金のほか、すべての電話利用者にも毎月の電話代として一部負担して貰っている。つまり、国民すべての方に支えられたサービスになっているということだ。
 こうした説明はさて置いて、私が日常的にどのようなときに利用しているか一部説明してみたい。

 現在、私は地元の京都市中途失聴・難聴者協会で、要約筆記者養成講座の実行委員長を担当している。その仕事は多岐にわたるが、殆どはメールなどで何とか出来る。その中で、例えば急に会場を変更しなければならないことがある。そのとき、メールやFAXでは何度もやりとりをしないと確定できないことがあり不便だ。
 その点、電話だと即時に相手を捕まえて、会場の利用が可能かどうかなど確認できることになる。このように、電話が出来るおかげで何とか役目を果たせていることは数え切れない。活動は置いておいても、仲間との懇親会の会場予約でも、急に参加者が増えたときにも電話して即座に可否が確認できるのはありがたいところだ。

 このように便利なリレーサービスだが、身近な難聴者の仲間では意外と利用されていないようだ。その一番大きな理由となっているのは「家族に頼むから」というもののようだ。確かに、家族は信頼できるし頼りになる。しかし、家族に頼ることは本人の自立の障害になることがあまり自覚されていないようだ。自分の好きなときに、自分で納得のいくように行動できるということが自立ということに外ならない。いつでも家族に頼めるわけでないだろうし、家族がやりとりを一方的に切って結果だけを本人に教え、本人がさらに尋ねたいと思っても出来ないことなどもある。

 リレーサービスについては、現時点では文字で質問し、文字で答えて貰う。または、手話で質問し、オペレーターの手話通訳で答えて貰う、の二通りしかないが、話が出来る難聴者からは「声で質問し、文字で答えて貰う」方式の要望が強い。現在は実現していないが、いずれはこの方式も可能になるだろう。

 先日の衆議院予算委員会は字幕付きで放送された。電話リレーサービスといい、これらは長い間聴覚障害者が実現を要望していたものだ。関係者の努力で少しずつ暮らしやすい社会が実現している。このことに希望を持ち皆さんと一緒に喜びたい。

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 大沼直紀Dr.の特別講演「聴覚障害に携わる方々へのメッセージ」(3443通信 329号)

電話リレーサービス
 URL:https://nftrs.or.jp/
利用者登録のご案内(動画)
 URL:https://www.youtube.com/watch?v=27QHOFvMSNA&t=2s
難聴児・者に対するコロナ対策マスク装用の影響(「難聴者の明日」193号)
 URL:https://www.3443.or.jp/news/?c=18333

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