3443通信 No.369
ラジオ3443通信「中国三大カマドの街」
ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
ここでは2012年11月20日OAされた、学校健診にまつわる話題をご紹介いたします。
95 中国三大カマドの街
An.
三好先生、前回は四川省の成都市の名物・マーボー豆腐について、興味深いお話をありがとうございました。
江澤はお話を伺っていて、よだれが出てきそうになりました。
Dr.
江澤さん。辛い料理としてもう一つ、重慶市の『火鍋』は忘れちゃいけません。中国語で『ホイコー』と呼ばれるんですけど(図1、2)。

図1 重慶名物の火鍋

図1 火鍋の元も売っています
An.
火鍋と呼ばれるのは、口の中が火のついたように熱くなるから、でしょうか?
Dr.
本日も、1を聞いて10を知る江澤さん。絶好調ですね。
うこっけいの出汁(だし)のスープに、唐辛子ソースをむちゃくちゃたくさん放り込んで、真っ赤になった鍋で肉や魚そして野菜を、ゆでて頂く料理です。
An.
重慶市っていうのは、やはり成都市と同じような環境にあるんでしょうか。
Dr.
成都市は、三国志でいうと『蜀』の国に当たります。
それに対して重慶市は、三国志の『巴(は)』の国に相当します。
『巴蜀』というのは、正に三国志で諸葛孔明が勝ち取った領土そのものなんです。
An.
それじゃ文化、ことに食文化も似ているんですね?
Dr.
成都市も蒸し暑い所ですが、重慶はもっとすごいんです。
一般的に『中国三大ストーブ・シティ』という表現がありまして、ですね。
An.
それはきっと、すごく暑い地域という意味なんですよね。
Dr.
この三大シティは、長江つまり揚子江の上流沿いの、南京市・武漢市・重慶市のことなんですけど。夏にはいずれも、40度以上の気温になりますから・・・・・・。
An.
先生、仙台市ではちょっと考えられない暑さですよね!
Dr.
現在では、これらの三都市も近代化が進み、エア・コンもしっかりしていますから住みやすいんですけど。私が初めて中国に行った1990年頃には、天然自然の気候が家の中でも満喫できる状態でした。
An.
それはきっと、ものすごく暑苦しいんでしょうね。
Dr.
7月が1年の中でもっとも蒸し暑いシーズンなんですけどね。
私が親しくしていた南京医大教授の自宅では熱帯夜の最中、寝苦しくってもどうしようもなくて、1台だけある天井の扇風機が熱い空気を、ただゆぅっくりとかき回していて・・・・・・。
An.
とっても寝苦しそう!
Dr.
さすがに現在の中国は、それとは違いますけど、ね。
そういう熱い気候と、四川の食文化の産物が、火鍋なんですよ。
それに重慶市は、蒋介石が国民党政府を置いたところで・・・・・・。
An.
美味しい料理を作るコックさんが、たくさん居るんですね!?
Dr.
火鍋もただ辛いんじゃなくって、深い味わいに富んでいるんです。
でも、とにかく辛いんですよ。
冷房が効いているからマシなんですけど、とにかく全身汗まみれになってその火鍋を食べるんです。
An.
先生の大好きな青島ビールも、もちろん忘れちゃいけません。
Dr.
汗になった体中の水分をビールで補いながら、夢中で食べた記憶があります。
An.
それくらい四川省ってのは、湿度と温度の高い地域なんですね。
Dr.
重慶市の博物館には、有名な『宋姉妹』の写真(図3)が飾られていまして。

図3 宋姉妹の写真
An.
それは、どなたでしたっけ?
Dr.
『宋』という財閥の、3人姉妹なんですけれど。長女が孔子の子孫の大商人と結婚し、次女が孫文と結婚し、末っ子が蒋介石と結婚したんですね。
An.
そんなすごいことがあったんですか!?
Dr.
ですから俗に、「長女は”財”つまり財産と結婚し、次女は”革命”と結婚し、三女は”権力”と結婚した」と表現されるんです。
An.
孫文は辛亥革命を起こし、清の国から現在の中国の元になる政治の基礎を築いたんですもの、ね。
それに対して蒋介石は、国民党を率いて中華民国を作った人ですよね。
同じ家族の中の姉妹が、まったく異なる立場の、それぞれトップになる人物と結婚しているんですから。
歴史の偶然かも知れませんが、すごいことですよねぇ。
Dr.
孫文はある意味神格化されていまして、辛亥革命の最中、日本に亡命していた時期に「中山(なかやま)」と偽名を使っていたんです。
それが中国では、「中山(ちゅうざん)」と呼ばれることになり、孫文の別名を孫中山(そん・ちゅうざん)と称するんです。
私が客員教授を務める南京医科大学のそばには、孫文を祭った『中山稜』という巨大なお墓があります。
この中山稜で、以前お話しした中国におけるスギ花粉症の第1症例が発見されていますので、頭の片隅に入れておいてくださいな。
An.
先生のお話は、やっぱり歴史的にも地理的にも、あまりにもスケールが大きくって(笑)。
Dr.
でも、優秀な江澤さんの頭脳には、必ず全部入っちゃいますから(笑)。
で、お話はもどるんですけど。そういったエピソードに満ちた四川省の、その南側にあるのが、今回私たちが調査に行った雲南省なんです。
An.
雲の南って字を書くんでしたよね?
Dr.
四川省がお話ししたように、太陽が見えないくらい雲に覆われた地域なので。
An.
あ、その雲の南の地域なので、『雲南省』なんですか!?
Dr.
この説は、司馬遼太郎がその著書『街道を行く20』 の『中国・蜀と雲南の道』というタイトルの本に、記されています。
おそらく、当たっているんだろうと、私は思います。
An.
雲の南の国なんですから、きっとお日さまががいつもニコニコしている土地じゃないんでしょうか?
Dr.
雲南省も広いので、気候はさまざまです。大体、日本と同じくらいの面積ですから。
An.
それじゃ、天気もそれぞれですよね。
Dr.
私たちが今回訪ねた、昆明市・香格里拉市・西双版納は、かなり気候風土の異なる地域なんです。
でもそれぞれに、とっても面白かったので、そのお話をします。
An.
世界は広いですから、ね。
先生の世界のお話は、すごく壮大で江澤は大好きです。次回も続きが楽しみです!
本日は、ありがとうございました。
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