3443通信 No.371
ラジオ3443通信「鄭和将軍と昆明調査」
ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
ここでは2012年12月4日OAされた、学校健診にまつわる話題をご紹介いたします。
97 鄭和将軍と昆明調査
An.
三好先生、前回はこのOAでも何回か話題にした、7つの海のお話のうちマゼランやコロンブスの大航海時代より、70年も前に明の鄭和という将軍がアフリカまで大航海をしていたとか。江澤は興味深々です。
Dr.
ヴァスコ・ダ・ガマが喜望峰を回って、当時のヨーロッパからインド洋へ出ることができたのが・・・・・・、江澤さん。いつのことでしたっけ?
An.
ちょっと待ってくださいよ、先生。
世界史の授業で江澤が暗記されられたのは、ええっと。そうそう「ガマ、良くやった」と憶えさせられたので、1498年のことです。
Dr.
そのヴァスコ・ダ・ガマの乗っていた船の大きさが、178トンだったとされます。
それに対して鄭和の船隊の船の大きさは、8000トンだったと伝えられています。
An.
大航海時代のヨーロッパより、はるかに早くはるかに巨大な偉業を成し遂げていたんですね。東洋の方が。
Dr.
その鄭和将軍の生まれたのが、昆明市の美しい湖のほとりだったんです。
An.
それじゃ明の時期から昆明市は、中国の南アジアやアフリカへのルートの、拠点だったわけですね?
Dr.
「歴史は繰り返す」と言いますが、実は現在の中国の南アジアやアフリカへの進出ルートは、明の時代のそれを再現しているような、そんな雰囲気もあります。
An.
ホント先生、歴史は繰り返すんですねェ(笑)。
Dr.
でお話は戻るんですけど、ね(笑)。
私たちが今回調査旅行で利用した道路、つまり広州市つまり広東料理の本場から、昆明市を通ってミャンマーのヤンゴン市まで抜ける、ロング・ドライブ用の道の一部ですが。そこは、雲南省でもすごく有名な石林(シーリン)という観光地へのルートでもあります。この石林は、石の林という文字を充てるんですけど、江澤さん。どういう光景か、想像がつきますか?
An.
石の林ですか、先生。
まさか巨大な石がまるで「林」のように、つぎつぎと連なって生えている、なんてことはないですよね。
Dr.
正解です、江澤さん。
江澤さんは、私の心の中が、すべて透けて見えるみたいですねぇ(笑)。
そうですね、この石林の光景を思い浮かべるとしたら。石灰分の多い地層が、カルスト台地という呼び方をするんですけれど。斜めに隆起して、それが雨に削られて。ちょうど石の林のように、まさに林立している光景なんですよ。
ですから、例えて言うならば鍾乳洞が地上にできている、そんな風景なんです(図1)。

図1 奇岩巨石がそびえる石林
An.
その表現で、江澤にも石林の様子が目の前に浮かぶように、分かりました。「地上にできた鍾乳洞」なんですね!
Dr.
1998年に私は、昆明市の昆明医学院と共同研究を開始していまして。その時に、初めて石林を見たんですけれど、すごく印象的で。
でも、今回2回目ですが、やっぱりとっても忘れがたい所です。
An.
先生は昆明医学院と、どんな共同研究をしておられたんですか?
Dr.
以前お話ししたことがありますが、私たちの研究以前には、スギ花粉症は日本にしか存在しないと誤認されていまして。
An.
思い出しました。そんな常識のウソを、三好先生が覆したんですよね。
Dr.
中国のスギ、これを日本スギの学名であるクリプトメリア・ジャポニカに対して、クリプトメリア・フォルトゥネイって称するんですけれど。
その中国スギの巨木が、ここ昆明市のお寺にあるって、専門書に書いてあったんです。
An.
それで先生はそのスギを探しに、昆明市まで行かれたんですね! ステキな、本当にロマンを求めての研究活動ですよね。
江澤も一度、ご一緒してみたいですぅ。
Dr.
江澤さん、来年の調査はシルクロードの、敦煌(とんこう)へ行きますから、ぜひご一緒しましょうよ。
敦煌では江澤さん、江澤さんをラクダに乗せてあげますよ。
An.
えっ、先生。ラクダって乗れるんですか? 落ちないんですか? 江澤の足でも届きますか? たしかラクダって馬より大きいって、聞いたことがあります。
Dr.
江澤さん、ラクダは月の砂漠を歩いて行くんですから。江澤さんにば絶対、ステキな王子さまがエスコートしてくれますよ(笑)。
An.
三好先生、王子さま付きだったら江澤は、ぜひともご一緒させて頂きますよ(笑)。
Dr.
お話は戻るんですけどね(笑)。
そんなわけで昆明医学院とは、中国スギとその花粉症について、共同研究をやっていたんです。
An.
昆明市で、話題の中国スギは見つかりましたか?
Dr.
えぇ、目的としていたお寺で、樹齢800年のスギの巨木を見つけました。
An.
樹齢800年ですか!
Dr.
名前を『孔雀スギ』と言いまして、元の時代に植えられたスギだとのことでした。
An.
雲南省の歴史を読むと、この土地が中国の領土となるのは、元の時代でしたよね。
Dr.
元は雲南省だけじゃなくって、ユーラシアの大部分を領土としましたからね。
日本だってその時期、元寇(げんこう)に見回れていますし、ね。
An.
その時代からのスギって、やっぱりびっくりですよね。
Dr.
そんな研究の経緯があって、私たちは昆明医学院と共同研究をやっていたんですよ。
An.
セーンセ。三好先生の研究って、本当に世界の隅々(すみずみ)まで、行き届いてるんですね。
Dr.
昆明医学院との研究の際に、バター茶ほどじゃないんですけど。ちょっと珍しい食事に、お目にかかりました。
An.
次回はお食事のお話ですね。