3443通信 No.378
ラジオ3443通信「高山病と高地トレーニング」
ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
ここでは2013年2月19日OA(オンエアー)された、学校健診にまつわる話題をご紹介いたします。
104 高山病と高地トレーニング
An.
三好先生前回は、匂いつまり嗅覚がその刺激で消化管すなわち胃や腸に、反応を起こすこと。それは、迷走神経という内臓神経と嗅神経との関連で発生する現象であること。それから、この迷走神経がしゃっくりや耳掻きのときの空せきなどに関わっていること。などなど、興味深いお話を伺いました。しゃっくりを止めるのに、後からそっと近寄って「わっ」と大声をあげてやることは知ってましたが、まさかそれが迷走神経の働きだなんて・・・・・・。江澤は絶句してしまいました。
Dr.
その迷走神経の働きのせいで、高山病になったチベット調査グループのメンバーが、標高3640メートルの高地で昼食を取ろうとしてと、ノビちゃう。お話はそこから発展したように、憶えています。
An.
高山病って、怖そう!
Dr.
実際高山病になると、そんな吐き気・嘔吐や頭痛そして呼吸困難が出現し、とっても苦しい思いをします。
An.
慢性の酸素欠乏状態が、その背景にあるんでしたよね?
Dr.
高地では気圧が低いものですから、空気の中の酸素の濃度もそれに比例して低下します。それに加えて高地では気温も低いことが多く、人体の血管も縮こまりがちとなります。
An.
酸素を人体の隅々まで運ぶ、赤血球が十分に体の中を回らなくなりますね。
酸欠が、より一層ひどくなるんじゃあ?
Dr.
それに対して人間の体は、呼吸数を増やしたり、脈が速くなったり、酸素をより多く運ぶような努力をします。
An.
人間の体は、そういう高度に慣れるものでしょうか?
Dr.
もともと現地の人々は、そういった環境に適応して普通に生活していますから(笑)。
An.
そうか! 人間って、たくましいものですねぇ。
Dr.
高地でもその環境に順応すると、体の中で赤血球を増加させるホルモンが分泌されるようになります。その結果赤血球が増加し、酸素の運搬が容易になりますから、酸素が再び体内の隅々まで届くようになります。
An.
赤血球が多いと酸素の供給がスムースで、空気の薄い高地でも楽なんですね、先生。
あれっ。てことは、と、その赤血球の多い状態のまま、普通の標高の土地、例えばこの仙台市なんかで生活すると、通常の赤血球数の私たちよりも、ハードな動きは楽なんじゃあないでしょうか?
Dr.
江澤さんは『はだしのアベベ』って、有名なマラソン選手のことを、ご存じですか?
An.
ラジオ3443通信に出てきた、『はだしのゲン』は知ってますけど、『アベベ』?
名前だけは江澤も聞いたことがあるような・・・・・。それは、どなたでしたっけ?
Dr.
1960年、ローマ・オリンピックの男子マラソンで、エチオピアのアベベ選手が当時の世界記録で優勝しました。エチオピアの首都アディスアベバは標高2,400メートルの高地にあり、普段の生活から酸素は少なめなんです。
An.
それじゃあ、普段から血液の中の赤血球は多めなんでしょうか。
Dr.
ですからローマのような平地では余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)でして、マラソンでも普段そのままのはだしで快走しました。
そして『はだしのアベベ』って、たちまち世界の英雄になったんです(図1)。

図1
An.
それで『高地トレーニング』が有名になった・・・・・・?
Dr.
低酸素状態でマラソンなどのトレーニングをすると、赤血球増加などのために酸素運搬に余裕ができます。マラソンは要するに持久走の一種ですから、酸素に余裕があれば楽に戦えます。
An.
毎日標高2,400メートルのアディスアベバで走っていれば、赤血球は増加しそうですね。
Dr.
高地トレーニングについて、一般の関心が高まったのは、そんなことがきっかけだったんです。
私も、1960年のローマ・オリンピックは、まだカラーテレビが無かったものですから、白黒のテレビで見たんですけど。アベベは白黒テレビでも、すごい人気者だったことを憶えています。
An.
三好先生はそんなアベベのマネをして、チベットへ高地トレーニングに行くんですか?
Dr.
たった今OA中の昆明市(くんみんし)、つまり今回の私たちの調査地が、実は高地トレーニングの本場なんですよ。標高1900メートルですから、ね。
An.
標高1,900メートルでしたら、日本国内にもいくつか候補地になりそうな場所は、ありそうですね。
Dr.
高地トレーニングに適している、世界の代表的な場所には、次のような地域が挙げられています。
米国のコロラド州ボルダー市、同じくニューメキシコ州アルバカーキ市、スイスのサンモリッツ地域、そして話題の昆明市です。
国内では、長野県菅平高原、同じく長野県の峰の原高原、そして岐阜県の飛弾御嶽高原が知られています。
An.
観光地としても、有名な場所ですよね。
Dr.
厳しいトレーニングを積む必要があるんでしょうから、気分転換に適した土地が最適なんでしょうね。
なお私が自分で目撃した、もっともつらい高地トレーニングはですね。2001年に訪れたチベットのラサ市で、目抜き通りのあちこちで現地の軍隊が、ダッシュの繰り返しを何回も何回もさせられていた光景です。
An.
標高3,640メートルの地点で、ダッシュを繰り返すんですね。すごいですねぇ。
Dr.
他の高地トレーニング地は、すべて標高2,000メートル以下ですからね。
きっと北京オリンピック向けの、特別プログラムだろうって、内心私たちは思ってましたけれど(笑)。
それを見ていた私たち自身、低酸素に喘ぎながらの観光で、まさに高地トレーニングの最中だったんですよね。
An.
お互い様みたいな・・・・・・。
Dr.
お話は続きますが、今回も時間切れみたいです。次回のお話も、楽しみにしていてくださいね。
(104話)
関連記事
ラジオ3443通信(一覧)