3443通信3443 News

 

みみ、はな、のどの変なとき

87 睡眠時無呼吸症候群(SAS)

前話  目次  次話

 

いびきがホントに恐いのは、ここで述べる睡眠時無呼吸症候群(Sleep ApneaSyndrome,SAS)の表れであることが少なくないことです。

このSASは、近年注⽬されている乳幼児突発死症候群(Sudden Infant DeathSyndrome,SIDS)の⼀因とも推測され、⼩児の成⻑障害を来す恐れのある病態として疎かにすることのできない状態なのです。
 こうした幼少児のSASは、前述した扁桃やアデノイドの肥⼤が原因であることも、少なくありません。⼩児に睡眠時の呼吸障害が⾒られたら、⼤事に⾄る前に対策を考えておくべきでしょう。

SASは⼩児のみならず成⼈においても、不整脈などさまざまの不随症状をもたらします。SASが進⾏し重症化すると、呼吸器や循環器(肺や⼼臓)の障害から全⾝倦怠感や疲れ易さそして息切れなどの⾃覚症状が出て来ます。

SASでは⾼⾎圧となることが多いのですけれども、無呼吸のために全⾝的に酸素が不⾜するので、体は酸素を隅々まで送り込もうと⾎圧を上げるのだと、理解することができます。また同じ理由から酸素を運搬する⾚⾎球が増加し、⾎液が濃くなります。すると⾎液は⾎管の中で詰まりがちになり、脳梗塞を起こしたり⼼筋梗塞に⾄ることだってあります。
 そこまでひどくなくとも、不整脈が起き易かったり脳の萎縮が⽣じたりすることは、決して稀ではありません。

また睡眠不⾜による昼間の耐え難い眠気は、しばしば重⼤な事故の原因となります。
 現実にスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故や⼤型タンカーの座礁事故など、SASがその原因と推測される⼤事故なども存在し、そうした意味では本⼈だけでなく周辺の⼈々をも巻き込む、社会問題でさえあります。

ところでSASは、繰り返すようですが太った⼈に多く⾒られます。それは、肥満で気道内側にも脂肪が付いているためや、腹部の脂肪のために胸部が押し上げられ、呼吸の浅くなることが原因なのですが、こういう⼈はおうおうにして⼤雑把でのんき、お⼈好しで物事を緻密に考えるのが苦⼿と、⾒られがちです。
 けれどもこれは、実はSASのために昼間は絶え間の無い眠気に悩まされている、そのせいだと考えられるのです。

こうした眠気のために昼間からブラブラしていて、仕事がほとんどできなかったり家庭⽣活でも問題が⽣じたりします。

学⽣ではもちろん、学校の成績が下がるでしょう。
 このためSASの⼈は、怠け者と誤解されたり精神障害者扱いされたり、時には実際にうつ病になったりもします。

SASでは昼間は呼吸は正常ですが、眠りに⼊るとまもなく呼吸停⽌を繰り返します。呼吸停⽌は10秒から20秒続き、中には1分以上⽌まったままの⼈もいます。

これは眠るとのどの筋⾁の緊張が低下し、⾆根部が下に落ちて気道が狭くなり、結果的に窒息状態となるためです。
 それに続いてあえぐような呼吸が再開され、いびきも発⽣します。こんな呼吸を⼀晩中繰り返しますので、どうしても眠りは浅くなり、睡眠不⾜となります。

つまり、昼間はとっても眠い、という訳です。

不思議なことに、こんな睡眠中の呼吸障害があっても、本⼈はまったく⾃覚症状がありません。ですからその診断には、録⾳や家族の観察記録が必要です。

 

前話  目次  次話

[目次に戻る]