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みみ、はな、のどの変なとき

101 声が擦れる(嗄声)

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声が擦れる、しわがれ声になる、それを嗄声(させい)と⾔います。これがあまりにひどいと、終にはまるで声が出なくなります。この嗄声は年令によって病態も、もちろん対策も異なります。年代別に、ご説明しましょう。

学童期の⼦どもで、声が擦れている⼦を時に⾒かけます。これは多くは”学童嗄声”と呼ばれるものです。つまり学校などで、すごく活発に遊ぶ余り⼤きな声を出し過ぎ、結果的に嗄声に⾄るものです。親としては⼦どもの声が擦れているとびっくりし、何事かと⼼配になりますが、のどを休ませれば治って⾏きます。とは⾔え、⼦どもに遊びの場で⼤声を出すなと⾔うのは、実際上ちょっと困難です。

⼩学校⾼学年から中学校にかけての男⼦で声がヘンになったら、それはやはり変声期(声変わり)をまず疑うべきです。この時期に男⼦の体は⼤きく変わり、⼆次性徴であるのどぼとけは⼤⼈と同じ形態へと発達します。これに伴い声帯も⻑く⼤きくなり、発⽣時の振動周波数が変化します。これが声の変貌として現われるのが、つまり声変わりです。この期間は発声時くれぐれも無理をせず、声帯に負担のかからぬよう⼼がけてください。

10歳代後半から成⼈以降で、良く声を使う⼈の嗄声は謡⼈結節の疑いがあります。この結節は、声楽を習っている⼈に⾒られることもあり、保育所の保⺟さんや幼稚園・学校の先⽣などで、半ば職業的に認められることもあります。保育所や幼稚園で、⼩さな⼦どもたちを相⼿に⼤きな声を張り上げている光景が⽬蓋に浮かぶようで、微笑ましいような気もしますが。

謡⼈結節では声帯の両側に、対称性に良性のごく⼩さなポリープが出現します。声帯の安静を守ればかなりの頻度で治るものですが、職業的にそれが難しいこともあります。そんなときには、切除するのも⼀つの⽅法です。しかしその後も、当然ながら発声に気を付けねばならず、発声訓練が必要となる例もあります。要は、のどに無理な⼒をかけず腹式呼吸で発声することが重要なのです。

政治家など、声の安静なんて⾔っていられない⼈では、結節を通り越して声帯⾃体がポリープ化していることもあります。この場合には、そのポリープを切除せねばなりません。切除すれば声はきれいになるのですが、昔は「それでは演説に迫⼒が無くなる」と、⽿⿐科医にタダをこねる政治家もいたとか。 成⼈病年令以上の⼈で特にヘビースモーカーでは、喉頭の悪性腫瘍も考えねばなりません。肺癌と並んで喉頭癌は、タバコとの関連が⾮常に強く疑われる腫瘍です。思い当る⽅は、常々注意を怠らないようにしてください。まあ、タバコを⽌めるのが⼀番の予防ですけれど。それができるくらいなら苦労は要らない、そう⾔いたい⽅もおられそうです。

嗄声の原因として、声帯の運動⿇痺の⾒られることがあり、反回神経⿇痺と呼ばれます。反回神経とは、声帯の運動を司っている神経の名前です。この神経は胸廓の奥を⾛っているために、胸廓の疾患に際して⿇痺を⽣じ、嗄声となることがあります。ここで⾔う胸廓の疾患とは、具体的には肺癌や⾷道癌などのことです。嗄声に伴って嚥下困難など他の症状が⾒られた場合には、要注意です。

故・池⽥⾸相のダミ声を憶えておられるでしょうか? あの特有の嗄声も、下咽頭癌によるものでしたね。次項では、それについて述べましょう。

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URL:https://www.3443.or.jp/img/book/manga_04_3.pdf (医学コミック「カラオケポリープは踊る」の症状解説より)

 

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