3443通信3443 News

2024年5月 No.351

耳のお話シリーズ30
「あなたの耳は大丈夫?」8
~大沼直紀先生(筑波技術大学 名誉教授・元学長)の著書より~

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 私が以前、学校医を務めていた聴覚支援学校。その前身である宮城県立ろう学校の教諭としてお勤めだったのが大沼直紀先生(筑波技術大学 名誉教授)です。
 その大沼先生による特別講演の記事『聴覚障害に携わる方々へのメッセージ』(3443通信No.329~331)に続きまして、ここでは大沼先生のご著書『あなたの耳は大丈夫?』より、耳の聞こえについてのお話を一部抜粋してご紹介させて頂きます。

聴力検査を受けてみよう
 もっと気軽に聴力検査を受けてみてはいかがでしょうか。
 ここでは、現在の聴力検査がどんなふうに行われているのか、聴力検査によってどんなことがわかるのかなどを説明します。
 難聴があるのかないのか、もしあったとしたら、それは医学的治療によって治る難聴なのか、治せない難聴なのか。

 簡単にいうと、聴覚神経そのものがだめになって聞こえにくい場合は、残念ながら治せない難聴(感音難聴)といえます。
 そうではなく、聴覚神経は正常なのに、そこに達するまでの道のりに障害があって聞こえにくい場合は、十分に治せる、あるいは聞こえの悪さを補うことができる難聴(伝音難聴)です。一度、聴力検査を体験してみましょう。

聴力検査でわかる気導聴力と骨導聴力
▼聴力障害の原因部位を調べる
 健康診断などで受ける簡単な聴力検査は、純音聴力検査と呼ばれ、1000ヘルツと4000へへルツの2種類の周波数のピーという純音を、ヘッドホンで聞いて調べるものです。より精密な純音標準聴力検査では、周波数の種類が増え、低い125ヘルツから高い8000ヘルツまでの聴力を測定します。どちらもヘッドホンを頭につけて行われる検査で、これを「気導聴力検査」といいます。

 ヘッドホンをしないで行なう純音聴力検査もあります。耳の後ろあたりの骨に小さなバイブレータのような骨導振動子を押し当て、頭の骨を伝わる音を聞く検査です。これは「骨導聴力検査」と呼ばれます。

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 このふたつの検査の結果を比べることにより、聴力の低下は伝音難聴によるものなのか、感音難聴によるものなのかが判断できます。
 内耳の奥に障害のある感音難聴では、いずれの検査でも同程度に悪い結果が出ます。一方、鼓膜や中耳に障害のある伝音難聴では、耳の後ろに振動端子をあてる骨導聴力検査だと正常な結果が出るのです。伝音難聴に骨導補聴器が使われる理由は、ここにあります。

▼オージオグラムって何?
 聴力検査で得られた周波数ごとの聴力レベルの値を記録したものを、オージオグラムといいます。
 オージオグラムの縦軸は、音の強さを表します。上が弱い音で、下にいくにつれ強い音になり、聴力レベルを表わす数値(デシベル)が大きくなります。横軸は、音の高さを表します。左から右に向かって低い音から高い音になり、周波数の数値(ヘルツ)が大きくなります。

 オージオグラムに記入される主な記号は、起動量力検査の右耳と左耳の結果は〇と×、骨導聴力検査の右耳と左耳の結果は“[”と“]”で表します。それぞれの記号に➡がついているときは、聴力がそれ以上に悪いことを意味します。
 オージオグラムのさまざまな形状は聴力型として分類されます。これによって障害の状態を大ざっぱに把握することができ、難聴のタイプに合った適切な補聴器を処方するためのデータとなります。

【前話】「あなたの耳は大丈夫?」7

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