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3443通信 No.374

 

耳のお話シリーズ53
「あなたの耳は大丈夫?」31
~大沼直紀先生(筑波技術大学 名誉教授・元学長)の著書より~

図00a図00b


 私が以前、学校医を務めていた聴覚支援学校。その前身である宮城県立ろう学校の教諭としてお勤めだったのが大沼直紀先生(筑波技術大学 名誉教授)です。
 その大沼先生による特別講演の記事『聴覚障害に携わる方々へのメッセージ』(3443通信No.329~331)に続きまして、ここでは大沼先生のご著書『あなたの耳は大丈夫?』より、耳の聞こえについてのお話を一部抜粋してご紹介させて頂きます。

聞けども聞こえず 見えども見えず
▼受動ネコと能動ネコ
 自分で聞こう、見ようという意識をもたないと、聴力に問題がなくても聞こえないし、視力に問題がなくても見えないということを示す実験の結果があります。
 体格も性格もよく似た2匹の兄弟ネコを、左ページのような装置(図45)につなぎます。

図45 P.105
 図45


 ネコAは、自由に動き回れるようにしておきます。ネコBは、かわいそうですが、四肢の自由がきかないようにつり下げておきます。
 つまり、ネコBは自分の意志に関係なく、ネコAの動きに振り回されるだけという状態です。

 さて、ネコAは決まった範囲でという制約つきながらも、エサを与えられればそちらに走っていくことができますし、何か音がしたら確かめるために近づいていくことができます。
 これに対してネコBは、エサや興味の対象のほうへ行きたいと思っても、それができません。そればかりか、ネコAの動きによっては、まるで反対のほうへ移動させられることさえあります。

▼心を閉ざすと聞こえない、見えない
 自分の意志がまったく行動に反映されない生活が続くうち、ネコBは物音がしても振り向きもしなくなり、エサを見ても興味を示さないようになります。物音のするほうや、エサのところに行きたいと思っても、その気持ちはかなわないのですから、思うだけムダとあきらめてしまうのです。
 物音は確実に聞こえているし、エサも見えているはずです。しかし、ネコBにとっては聞こえていない、見えないのと同じです。
 また、性格の点でも、ネコBからは明るく快活なものが消えていました。無気力で無表情、陰気な猫になっていたのです。

 人も含めて自分以外のいろいろなものと積極的にかかわろうとする意欲は、聴覚にとっても視覚にとっても、また、脳の働きにとっても大切なことです。
 意欲的に生きることによって、聴能をどんどんのばしていってください。


【前話】「あなたの耳は大丈夫?」30

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