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3443通信 No.379

 

耳のお話シリーズ58
「あなたの耳は大丈夫?」36
~大沼直紀先生(筑波技術大学 名誉教授・元学長)の著書より~

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 私が以前、学校医を務めていた聴覚支援学校。その前身である宮城県立ろう学校の教諭としてお勤めだったのが大沼直紀先生(筑波技術大学 名誉教授)です。
 その大沼先生による特別講演の記事『聴覚障害に携わる方々へのメッセージ』(3443通信No.329~331)に続きまして、ここでは大沼先生のご著書『あなたの耳は大丈夫?』より、耳の聞こえについてのお話を一部抜粋してご紹介させて頂きます。

家庭内の騒音源、台所のうるささ
▼台所は騒音の多発地帯
 音声の聞き取りを妨げる家庭内でのさまざまな音源の実態について調査してみると、見逃せないのは台所から発せられる音です。
 料理をする音。食器を洗う音。換気扇、湯沸かし器、電子レンジなどが動く音。また、冷蔵庫のモーター音のように、常時漂っている低周波のノイズ。買い物袋やポリ容器から物を出し入れするときの音、ゴミ袋を取りまとめるときの音などは、想像以上に大きく、聞きたい音声にかぶさってくる雑音です。

 現在、アパートやマンションなどで主流の台所と居間が同室になったりリビングダイニングルームでは、食事のしたくやあと片づけなどのとき、聴力が正常な人でもテレビの音や家族団らんの会話が相当聞きにくいはずです。ましてや、騒音に弱い難聴の耳には、なおさらでしょう。
 台所や食堂から居間を離すなど、家庭内で騒音を遠ざけるような間取りや空間設計に配慮がなされるようになれば、補聴器などから得られる恩恵は、もっと大きくなるはずです。
 聴覚補聴機器がよりよく生かされる音環境のあり方について、もっと多くの人に知ってほしいものです。

▼聞き取りやすい音とは
 わたしたちの暮らしの中にはさまざまな音があふれていますが、その中で聞き取りやすい音と聞き取りにくい音とがあります。
 難聴の人とコミュニケーションをとるときには、聞き取りやすい音を用いることを心がければ、意思の疎通をはかる助けとなります。

 では、どんな音が難聴の耳にも聞き取りやすいのでしょうか。

 ここにひとつの実験があります。同じ音声材料を使って、次の3つの条件で、聞き取りのよさを比較してみました。
① 本人の肉声をじかに聞く
② マイクで話している声をスピーカーを通して聞く
③ テープに録音した声を再生して聞く

▼もっとも聞き取りやすいのは一時音源
 実験の結果、聞き取りやすかったのは、①肉声、②マイク、③テープの順でした。
 この順番は難聴の人ばかりでなく、健聴者にも当てはまります。人の声なら肉声がもっとも聞きやすいのです。
 人の声のほか、楽器の音などを聞かせても、同じ結果が得られます。声なら肉声、楽器の音なら生演奏と、音を発生するもの自体の一時音源が、いちばん聞き取りやすいのです。

▼難聴の人とじょうずに話すには
 聞こえが悪くなった人には、生の声や音を音源のそばで聞いてもらうのが最良の方法です。
 話すときには、相手のそばに近づいて、耳に口を寄せ、はっきりした声でゆっくりと、しかし自然な口調をくずさずにしゃべると、よく聞き取ってもらえます。
 音楽を楽しんでもらうなら、テープやCDより、コンサートに出かけ、会場のいちばん前で生演奏を聴いてもらうのがよいでしょう。


【前話】「あなたの耳は大丈夫?」35

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