3443通信3443 News

2022年11月(No.333)

 

英国紅茶シリーズ⑨
ラジオ3443通信「ブラジルのさんば?」


 ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2013年7月9日OAされた、英国紅茶にまつわる話題をご紹介いたします。

122 ブラジルのさんば?
An.
 三好先生、前回はブラジルの南緯3度の地域つまりフォルタレーザ市でのJICA(ジャイカ)の活動に、先生が協力したときのお話でした。本日はその詳細と、サンバについてのおもしろい話題を伺えるとか。
Dr.
 このJICAのプロジェクトは、ポルトガル語で"Projeto Luz" つまり「光のプロジェクト」という名前です。
An.
「光のプロジェクト」。なんてステキな名前でしょう。
 まるで、人間が輝いて生きる。そんな目的のための計画じゃないかって、江澤はそう思いました。
Dr.
 このラジオ3443通信は、話題が世界中のしかも紀元前から未来にまで至るお話ですけど、一応私の専門である耳鼻咽喉科の病気がメインです。
 でも今回のテーマは、人間が生まれることの科学で、直接耳鼻科とは関係ありません。とはいえブラジルと私との関わりをご説明するためには、欠かせないエピソードの数々ですので、耳を貸してください。
An.
 人間が生まれると言うと、出産のお話でしょうか?
Dr.
 「光のプロジェクト」のことなんですけど、ね。ブラジルでは出産のことを、"dar a luz"つまり「光に与える」って言い方をするんです。
An.
 それも、とっても良い表現ですね。
Dr.
 それでですね。今でこそ日本は、世界一衛生的な環境で生活一般から医療に至るまで、細菌感染とは無縁な状況です。
 でもそれは比較的近年のことであって、日本でも昔から現在ほど清潔な住環境や医療環境が、整っていたわけじゃありません。
An.
 出産も、そうだったんでしょうか?
Dr.
 前にもお話ししましたように、感染症を引き起こす細菌が発見されたのが、19世紀の半ばでしたから、それ以前は消毒や滅菌といった基本的衛生概念がなかったんです。
 出産についても、細菌感染の予防すらできていなかったので、産褥熱つまり出産時の感染で亡くなる母体が少なくなかったんです。でも清潔な状態をキープしてやれば、それは無くなりますので、それ以降は出産を巡る母子の健康状態は一変しました。
An.
 紅茶の流行とロンドン市民の健康状態、みたいなお話なんですね(笑)?
Dr.
 ただしそれは、現在の日本だから実現可能な一面もありまして。
 ブラジルのような広大な土地で、十分な医療環境が整備されていなかったら・・・・・・。
An.
 衛生的な、母子の健康が保障された出産、だけじゃないかも。
Dr.
 まして気候も、ブラジルはもちろん、日本のような温暖な土地じゃありませんから。
An.
 熱帯気候でしょうから、ね。
Dr.
 当然医者の数もブラジルでは不足してますし、看護師はさらに人数が少ないんです。
An.
 人手不足なんですね?
Dr.
 妊婦が出産時に、誰にもかまってもらえないばかりか、医師がいても自然に生まれてくるのを待てず、切開して出産することが当たり前になっていたんです。
An.
 それもどうなんでしょうね(笑)? あんまり自然な状態じゃなさそうな感じ。
Dr.
 その体制の打開に尽力したのが、JICAの「光のプロジェクト」だったんです。
An.
 具体的に先生、それはどんな?
Dr.
 耳鼻咽喉科領域のお話じゃないので、十分な説明かどうか、不安ではありますが。
 ブラジル流じゃなくって、日本古来の伝統的な出産法。つまり出産予定日前から母子の十分なケアを行ない、自然な出産をスムースにヘルプしてやる、助産婦さんの積極的な活用とそのための助産婦さんの育成。一言で言えば、それがこのプロジェクトの骨子です。
An.
 地球の真裏で、日本式の古からの知恵が、十分に活用されたんですね!
Dr.
 出産のそのときだけじゃなくって、前後もしっかり母子のケアをすることと、不自然な出産ではなくごく自然なそれがなされるよう、周囲がチームを組んで協力すること、ですね。
 そのために、母子との人間的な関係作りに非常に力を入れます。
 出産も、そのときだけ別の部屋を準備するのではなく、入院したその部屋でできるよう工夫されてます。
 実はそんな出産環境の作成に、仙台市の建築家がブラジルまで行っているんです。
An.
 そんなことがあったんですね!
 先生も、お力添えしておられたんでしたよね?
Dr.
 私はまず、そのプロジェクトの中心になった、当時東北大学の助教授だった医師と、JICAの担当者との間に立ちました。
 それに、現地の日本人関係者とのつなぎ役を務めたり、ブラジルで関係者と会ったりしました。
 ちょうど私も、ブラジルでのアレルギー調査を予定していた時期だったので、それもタイミング的に良かったのかも知れません。

図01
 トランジットのロサンゼルス空港にて「さんば」さんたちと


An.
 それにしても、南緯3度なんてきっと暑いんでしょうね?
 それこそ情熱の音楽であるサンバが、すごく似合う地域なんでしょうね。
Dr.
 南半球と北半球とでは、夏と冬が逆ですから、ブラジルを訪問するのには、現地が少しでも涼しい冬、つまり日本の夏に出掛けるんです。
An.
 夏・冬が逆転しているんですものね。
Dr.
 おまけに日本から、地面をまっすぐに掘り進むとブラジルに到達するので。ブラジルは私たちの立っているこの真下に存在するんです。
An.
 そうか! 時差は12時間。昼と夜も完全に反対ですね。
Dr.
 そんな思いをして、三好先生はどうしてブラジルへいくんですかって聞かれるんです。「サンバ」でも見に行くんですかって。
An.
 実は先生は産婆さん(笑)、つまり助産婦を見に行ったんですよね!?
Dr.
 江澤さんのギャグで本日は「落ち」です。
Dr.・An.
 ありがとうございました。

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